釣りの単位はなぜバラバラなのか|号・ポンド・オンスの経緯と実用換算

釣具店でラインを買おうとしたとき、パッケージに「3号」と書いてあるものと「12lb」と書いてあるものが隣り合わせに並んでいた経験はないでしょうか。

同じ棚にあるのに、単位が違う。どっちが太いのか、どっちが強いのか、パッケージを見比べても分からない。

オモリも同じです。「5号」「1.5oz」「3B」。同じ商品棚に3種類の単位が混在している。初めて釣具店に入った人が困惑するのは当然です。

この混乱には歴史的な経緯があります。

先にお断りしておくと、かなりややこしい話をします。途中で「もういいや」と思ったらそれで構いません。釣具店の店員さんに「何号のを買えばいいですか」と聞けば済む話でもあります。ただ「なぜこんなにバラバラなのか」を知りたい方は、読み進めてみてください。よく分からないということが分かるだけでも収穫です。


オモリの「号」は匁の生き残りです

オモリの号数の由来は尺貫法の「匁(もんめ)」です。

1匁は3.75g。これがそのまま1号=3.75gになっています。戦後、計量法(1951年制定、1959年完全施行)によって尺貫法が公式には廃止され、メートル法への移行が義務づけられました。「匁」という単位は使えなくなった。

ただ釣りの現場では匁で慣れ親しんだ重さの感覚が根付いていたため、匁を「号」という名前に呼び変えて、重さの値はそのまま引き継ぎました。グラムに直さず、号に逃がした。

ちなみに五円硬貨の重さは3.75g。ちょうど1匁=1号です。五円玉を手のひらに乗せてみてください。あれがオモリ1号の重さです。

計量法では、匁は真珠の計量にのみ使用が認められて現在に至ります。国際的にも "momme" として真珠の取引で使われている。匁が世界単位として生き残ったのは日本が世界最大の真珠産地だったからですが、釣りの世界では「号」という別名で生き残りました。


ラインの「号」はオモリの「号」とは別物です

ここが最大の混乱ポイントです。

オモリの号は「重さ」の単位です。1号=3.75g。ラインの号は「太さ」の単位です。重さとは関係ありません。

ラインの号数は、日本釣用品工業会が定める直径の規格です。ナイロンラインの場合、1号=直径0.165mmと定められています。号数が大きくなると太くなり、太くなると強くなるので「号が大きい=強い」は実用上おおむね正しいですが、号は強度を直接表している単位ではありません。

もともとラインの太さは「厘(りん)」で表記されていましたが、東レが国産ナイロンラインを発売する際に「号」表記を採用し、以降この表記が業界標準になりました。

同じ「号」という名前で、オモリでは重さ、ラインでは太さを測っている。別の量を同じ名前で呼んでいるのだから、混乱して当然です。


ポンドはアメリカから来た

lb(ポンド)はヤード・ポンド法の重さの単位で、1lb=約453gです。

釣りの世界にlbが入ってきたのは、アメリカのルアーフィッシング文化の輸入とともにです。バス釣りブーム以降、ルアーロッド・リール・ラインにlb表記が増えました。

ラインにおけるlb表記は「強度」を示しています。「10lb」と書いてあれば、約4.5kgの力で引っ張ると切れる(あるいは耐えられる)という意味です。

号は「太さ」、lbは「強度」。測っているものが違います。

「3号は何ポンド?」という質問が頻繁に出ますが、これは「直径0.285mmの糸は何キロの力に耐えるか?」という問いと同じで、素材によって答えが変わります。ナイロン3号は約12lb、フロロカーボン3号も約12lb、PE3号は約40lb。同じ3号でも素材が違えば強度がまったく違う。


PEラインがさらに話をややこしくしている

PEラインの号数は、ナイロンやフロロカーボンとは別の規格で決められています。

ナイロン・フロロは直径基準ですが、PEは繊維の太さの単位であるデニール(d)が基準です。PEラインは複数本の繊維を編んで作るため、断面が真円にならず直径の測定が安定しません。そのためデニールで規格を定めています。

ところが実際のパッケージにはデニールではなく号数やlbで表記されているので、ユーザーは内部規格がデニールであることを知る必要がない。知る必要がないのに、同じ号数でナイロンとPEの強度が全然違うという結果だけが残る。

PE0.8号は約16lb。ナイロン0.8号は約3lb。同じ「0.8号」で5倍以上の強度差があります。

葵ちゃんの根掛かり記事でPEとリーダーの強度バランスの表を作ったのは、この混乱があるからです。


オモリにはさらにオンスとBがある

号だけでも面倒なのに、オモリの単位はまだあります。

オンス(oz):バス釣りやソルトルアーで使われます。1oz=約28g。アメリカのルアーフィッシング文化が持ち込んだ単位で、ジグヘッドやシンカーのパッケージに表記されています。

B・G(ガン玉):フカセ釣りやウキ釣りで使われる小さなオモリの単位。Bはガン玉の大きさ、Gはさらに小さい「ジンタン」のサイズです。5G→4G→3G→2G→G→B→2B→3Bの順に重くなります。この順番に初めて触れた人は、たいてい一度は間違えます。


ロッドの長さも混在しています

ロッドの長さの表記も統一されていません。

フィート・インチ:ルアーロッド・バスロッド・シーバスロッドなど。「8'6"」(8フィート6インチ=約2.59m)のような表記。アメリカのルアーフィッシング文化の影響です。

メートル:磯竿・投げ竿・へら竿など。「5.3m」のような表記。日本の伝統的なエサ釣り文化の流れです。

尺:一部の和竿で今も使われます。

同じ釣具店の壁に並んでいるロッドが、フィート表記のものとメートル表記のものが混在しています。

ちなみに針にも号があります。ただし丸セイゴの10号と袖針の10号は見た目の大きさがまったく違います。針の号は形状ごとに独立した体系なので、別の形の針同士で号数を比べても意味がありません。


釣具店で困らないための換算方法

すべてを暗記する必要はありません。覚えておく数字は3つだけです。

オモリ1号=3.75g(五円玉の重さ)

ここから掛け算すれば、5号は約19g、10号は約38g、25号は約94gです。

ナイロン・フロロの号数×4=おおよそのlb

3号なら約12lb、5号なら約20lb。大ざっぱな目安ですが、釣具店でパッケージを見比べるには十分です。

PE0.8号=約16lb

PEラインは号数とlbの関係がメーカーによってばらつくので、パッケージのlb表記を直接読む方が確実です。

それでも迷ったら釣具店のスタッフに聞いてください。「PEの0.8号に合うリーダーは何号ですか」と聞けば、素材も強度も含めて適切な組み合わせを教えてくれます。


私の結論

ややこしい話をすると冒頭で宣言しました。ややこしかったと思います。

五円玉=1号。これだけ覚えて帰ってください。あとは釣具店の店員さんに聞きましょう。

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本記事の換算値は一般的な目安です。製品によって実測値は異なります。ラインの強度はメーカー・製品・ロットによって前後するため、パッケージの表記を確認してください。